蓮井元彦 写真展「川のそばで」
Motohiko Hasui Photo Exhibition “By This River”

2021年6月29日 – 7月25日 12:00-19:00 最終日17:00まで

川や河川敷とはどういった場所だろうか。

子供と遊ぶ場所。川の流れを眺める場所。鳥たちを観察する場所。物思いに耽る場所。ゴミが捨てられてしまう場所。ゴルフをする場所。ホームレスが生活する場所。暇を潰す場所。自分とは関係のない場所。今まで生きてきて、これと言って考えたこともない場所。
人はそれぞれ違ったことを思い浮かべるだろう。

実家の国分寺に帰省した帰りに多摩川の河川敷の横を車で走った。その日の夕焼けは黄とオレンジの絵の具が混ざったような色をしていて、僕は思わず脇のコンビニに車を止めた。そして、大変な勢いで走る車の流れの隙間を渡った。川の流れはいつもの多摩川という感じの穏やかさだった。

昔、多摩川の丸子橋付近は川幅が狭く急流であったらしい。橋ができる昭和9年まで「丸子の渡し」と呼ばれた船で乗客や物資を対岸の川崎に渡すのはなかなか大変だったそうだ。それから徐々に都心のコンクリートの建築用材のために多摩川の砂利が掘られ続けた。その結果、川幅が広くなり川の流れが今のように穏やかになった。

コロナ禍で遠出をしづらくなった。しかし、人の自然への渇望というものは変わらず、川や山などの身近な自然へと引き寄せられる。川は昔から周辺の人々の生活に寄り添ってきた。ロンドンであればテムズ川や学生時代によく通っていたイーストのリバー・ リー、パリであればセーヌ川だろう。それぞれの都市に川があり今も昔も多少の様相は変わっているが本質は変わらず、これからもきっと変わらない。

これらは川に集まる人々や河川敷そのものの写真であり、都市というものの中で残された自然に引き寄せられる自らの動物的な衝動を風景や人々、草木に重ね合わせたものだ。また、それと同時に多摩川・丸子橋付近の現在の記録である。

 


蓮井元彦
1983年生まれ、東京都出身。2003年渡英。Central Saint Martins Art and Design にてファンデーションコースを履修した後、London College of Communication にて写真を専攻。2007年帰国。国内外の雑誌や広告などで活動するほか、作品制作を行う。2013年、自身初となる写真集『Personal Matters』をイギリスのパブリッシャーBemojakeより発表する。主な写真集に『Personal Matters』、『10FACES』、『10FACES 02』、『Personal Matters Volume II』、『Yume wo Miru』、『Deep Blue – Serena Motola』、『吉岡里帆写真集 so long』、『for tomorrow』、『Marianna』 などがある。また、2019年にはG20大阪サミットにて京都・東福寺で行われたTea Ceremonyに際し制作された図録の撮影を手がけるなど活動は多岐にわたる。