「科学で殺すな」- 董林 写真展
時間:2月11日-2月16日 12:00-19:00
最終日:12:00-17:30
Reception Party:2月15日17:00~
このシリーズの制作に取り掛かる前から、夜に植物を撮影するのが好きでした。
私の原風景としてあるのは恐らく、動物や山、そして植物たちです。私はよく夜になると植物を明かりの下に置き、故郷へ想いを馳せていました。口を噤んだ植物は、いつも急いでいる自分を落ち着かせてくれるからです。
偶然、写真を撮ることで植物の名前、種類と特性を素早く検索できるアプリを見つけました。これはとても興味深く、近未来的に思われますが、同時に植物についての幻想も抹殺されたと言えます。
「人間は万物の尺度である」とは、人間がこのロジックによって世界を支配できるという考えと同義です。このアプリによって識別されるオブジェクトは植物ですが、いつか少しでも変化が訪れれば、あなたと私は識別されたそのオブジェクトになり得ます。こういった考えから、今回の「科学で殺すな」というテーマが生まれました。
最初は手で写真を引き裂いて貼り直すという方法を試みていました。人工知能と戦うために、または技術への恐怖から逃れるために、アプリでは認識できない植物を僕の手によって創造したかったのです。しかし、写真を引き裂く過程で、多くの目に見える指紋が写真に残ってしまいました。「支配されている」ことに対する私の抵抗は、淘汰されたと、その時気がつきました。どの道、写真を並べる作業にも人間の意識は関わっています。更に、撮影されたその植物たちは、都会の緑化の為や住宅の前で栽培されていたりと、つまり鑑賞用に作られたものです。
そこで、いっそのこと写真に樹脂を塗って指紋やほこりを多く残そうと思いつきました。これらの完成品は支配から解放されたいと願う世界、その希望を信じたい私のささやかな抵抗です。この表現技法はその「占有」の一形態ではありますが、このような論理を逸脱出来ない限り、私は「自由」になれないとさえ認識したのです。
この真実は、夜の暗い路地でその声を潜めていた植物たちから私がこっそりと教わったことなのです。